育成会について

いのちのたび博物館 ユニバーサル化事業

北九州の博物館/ユニバーサル化で知的障害について研鑽

 

 北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)は障害者、高齢者、外国人等にもなじみやすい博物館づくり(ユニバーサル化)を進めているが、その一環として1月22日、知的障害児者への知見を深めるための研修を職員や関係者向けに行った。福岡県立大学の寺島正博講師が「知的障害児者の現状」と「障害者差別解消法」をテーマに講演した。

 同博物館のユニバーサル化は、文化庁の補助事業として26、27年度の2年間をかけて行っているもので、博物館の展示プログラムの見直しと関係職員の意識の向上とを目指している。2年目の今年度は知的障害児者に関わる展示プログラムをソフト、ハードの両面にわたって見直していくほか、職員の人材育成として全障害種別の特性や対応の在り方等を研鑽することにしている。

 この日の研修は、展示プログラムの改善に備え、知的障害児者に関する概論とこの4月から施行される障害者差別解消法について研修を行ったもので、寺島講師は概論については、知的障害児者の①歴史、②法的な位置づけ、③発生時期と行動傾向、➃特徴、⑤行動、⑥彼らへの対応方法、⑦彼らの要望などについて紹介した。この中で同講師は、➃特徴として、「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する知的な機能に発達の遅れが生じる。金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に困難が生じる。感情のコントロールがむつかしい、といったことを挙げるとともに、⑥彼らへの対応では、ゆっくり、丁寧に、わかりやすく話すことが必要。文書は漢字を少なくしてルビーを振る。写真、絵、ピクトグラム(絵文字等)などわかりやすい情報提供を工夫する、といった13項目を紹介し、理解を求めた。

 一方、この4月から施行される差別解消法については、目的は「共生社会」の実現にあること、差別禁止の対象は行政機関と民間事業者が、また「受ける側」では障害者手帳保持者のほか、社会的障壁で相当な制限を受けている人も含まれていることなどを強調した上で、①制定の背景、②法の対象者、③法のベクトル、➃障害を理由とする差別の禁止、⑤不当な差別的取り扱い、⑥合理的配慮など10項目を紹介した。その中で同講師は、差別禁止には「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」があり、行政機関等はいずれもが対象になっているが、商業等を営む民間事業者(営利・非営利、個人・法人をを問わず)の場合、合理的配慮は努力義務になっていると説明した。

 また、合理的配慮については「障害のある人たち等から何らかの配慮を求める意思表明があり、その実施が負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮」とし、「意思の表明」、「環境整備」、「過重な負担」がキーワードとなることを指摘した。併せて手話、要約筆記、筆談、図解など本人が希望する方法でのわかりやすい説明が求められることなど合理的配慮の具体例を挙げるとともに、障害児については早い段階からの家族支援が不可欠なことを指摘した。 

 

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知的障害児者の現状等について研鑽した講演会

 

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「共生社会の実現」に向けて

 

「共生社会」の実現に向けて/北原会長が博物館の研修会で講演

 

 ユニバーサルミュージアム化を目指している北九州市の「いのちのたび博物館」で、1月19日、同館職員等向けの人材育成研修が行われ、北九州市障害福祉団体連絡協議会(障団連)の北原守会長(育成会会長)が「共生社会の実現に向けて」をテーマに講演した。

 同博物館は市立の自然史・歴史博物館で、昨年度からユニバーサルミュージアム化(障害者、高齢者、海外からの来訪者等にも親しまれやすい博物館づくり)を目指し、展示解説などの新たなプログラム開発や関係職員等の人材育成に取り組んでいる。2年目の今年は、プログラムの開発の一環として知的障害関係者の館内見学会と意見交換などを行うほか、人材育成では職員やボランティア向けの研修を行って、障害、高齢、外国人等に関する理解を促進させることにしている。

 このうち、プログラム開発では寺島正博・福岡県立大学講師が知的障害の特性について講演するほか、北九州育成会(親の会)の保護者との懇談や、当事者たちとのワークショップなども考えられている。一方、人材育成のための職員研修は同館と障団連が連携して行うもので、障害者運動が目指す「共生社会」や、各障害者団体の障害特性や活動状況などを研鑚することにしている。

 この日の講演で北原会長は、戦後の障害者福祉の変遷と今日の障害者制度改革を紹介するとともに、日本の障害福祉の流れは障害者の人権と自由を尊ぶ「共生社会」の実現を目指していると強調した。

 その上で、「共生社会」を実現するには、全ての障害者が「生きる力」を身に付けるとともに、生きていくことを困難にしている「社会の壁」を除去することが不可欠。そのためにも障害者や関係団体が地域と交流し、できるところから貢献活動を進めていくことが地域の信頼を得、共生社会をつくっていくことにつながる、と訴えた。

 

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共生社会について講演する北原会長

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新春のつどい

平成28年新春のつどい

 1月14日(木)、一昨年末に完成した法人本部拠点の育成会会館(北九州市戸畑区沖台2-4-8)で毎年恒例の「新春のつどい」が開催されました。この会は、北九州市手をつなぐ育成会親の会と社会福祉法人北九州市手をつなぐ育成会が共同で開催し、行政や様々な福祉団体等をお招きして新年のご挨拶や抱負を語る場となっています。特に今年度は、共生社会の実現を目指した育成会の思いのもと、たくさんの地域関係者の方に参加していただけたのは、大変嬉しいことでした。また、今回は、インクルとばたのコミュニティカフェ「ぱる」とインクル春ケ丘のコミュニティカフェ「ぽぽっと」さらに門司区にある「いこい作業所」による軽食が披露され、おいしいケーキやサンドイッチに心が温まるひとときとなり、育成会らしいアットホームな新年の幕開けとなりました。

 

新春役員紹介

親の会役員紹介

 

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坂本等さん写真展

重度知的障害の坂本等さんが写真展/感性のよさに称賛の声

 

 重度の知的障害がある坂本等さん(北九州市八幡西区在住44歳)の写真展が同区黒崎の「きさろく館カフェ」で12月24日までの2週間開かれている。市障害者芸術文化応援センター主催の「かがやき作品展」の一環。知的障害者による写真展は珍しいこともあって多くの市民の関心を集めている。

 作品は坂本さんが撮り始めたころから今日までのものの中からえりすぐった14点で、いずれも写真のアングル(構図)が素晴らしく、温もりを感じさせる力作となっている。

 このうち「働く」と題した作品は寒さの中、線路工事に精を出す作業員の仕事ぶりを捉えたもので、アングルの良さに加え、仕事の厳しさをしっかりと写している。また、「想い出のグリーングラス」は、韓国旅行の際にある庭園で目にした吹き出しのシャボン玉をあたかも生き物のように大きくアップしており、シャッターチャンスの見事さが光っている。このほかいずれの作品もカメラアングルがよく、感性の良さを感じさせるものとなっている。

 等さんが写真撮影に興味を持ち始めたのは、2010年に育成会の「ひまわり写真展」が開催されたころから。同じ頃、通所している障害者福祉事業所「若松工芸舎」に写真クラブができたこともあって、関心が増したという。そして、2010年には「ひまわり写真展」と北九州市芸術祭で表彰され、2015年にもひまわりアート展で特別賞を受賞している。ただ、母親のならゑさんによると、どのような場所(情況)が絵になるかを自分だけで見極めるにまだまだ困難があるようで、彼女の示唆もあって撮影場所に臨み、シャッターを切っているという。

 一方、会場の「きさろく館」では、来場者に作品への感想を聞いているが、その中には「全ての作品が素敵で、温かさを感じる」、「これからも心のこもった写真を期待」といった称賛や激励の声が寄せられている。なお、「かがやき作品展」は今回で11回目だが、写真展としては初めてとなっている。

 

坂本等ホームページ写真

作品展の前で収まる等さん(右)と母・ならゑさん

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対市要望意見交換会

来年度予算要望/市と育成会が意見交換会

 

 北九州市手をつなぐ育成会は12月18日、北九州市に対する平成28年度の予算要望について障害福祉課と意見交換会を行いました。これには育成会から北原守会長ら役員等が、また市側からは安藤卓雄発達障害担当課長らが出席しました。

 要望事項は事前に文書で提出し、回答を得ています。内容は①障害者支援施設(入所施設)おける老朽施設の建て替えと利用者の余暇活動での移動支援、②グループホームにおける重度・強度行動障害者の支援、③強度行動障害者に対する支援者養成、➃移動支援における委託契約要件の緩和とグループ支援、⑤知的障害に対する医師の理解促進と支援区分認定制度の「医師意見書」への記載協力、⑥就労継続A型事業所のさらなる展開と、市における知的障害者の雇用促進と正規職員への登用、⑦障害者差別解消法における市職員の合理的配慮の提供、⑧市営プールでの障害者の専用利用、⑨重度障害者医療費支給制度の継続の9項目からなっていますが、この日はこのうちの7項目について意見交換を行いました。

 意見交換の中で安藤課長らは、①の老朽施設の建て替えでは、利用者側の意見を当該法人にも伝えたい、➃の移動支援でのグループ支援では利用者側の意見も聞き、制度化を考えたいと述べるとともに、⑤の医師への協力要請では、研修を通して医師の障害者理解が進み、意見書記載への協力も進展しつつある状況を報告、今後も協力を要請したいとしています。また、⑥の障害者雇用では、27年度4月時点でA型事業所が40ヶ所で定員756人となっていることを報告するとともに、市庁舎内に「障害者ワークステーション」を新設し、知的障害者等の雇用に力を注いでいることや、「共同受注センター」を開設(民間委託)し、小規模事業所等の受注が活発化しつつあることなどを報告しました。⑦の差別解消法における市職員の合理的配慮の提供では、解消法に基づく対応要領(ガイドライン)を当事者団体と連携しながら作成中であり、来年の施行に向け積極的な普及啓発を行いたいとしています。

 これらに対し参加者からは、地域での障害者情報が乏しいこともあって支援活動がうまくいっていない(民生委員を兼務)といった声や、差別の解消には仕組みと合わせ、何よりも市職員の資質の向上が欠かせないといった指摘もありました。

 育成会では、今回の予算要望と意見交換を踏まえ、来年度に向けた課題を精査し、実践に移していくことにしています。

 

意見交換会

写真は実践を踏まえたやり取りが行われた   意見交換会

 

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