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いのちのたび博物館 ユニバーサル化事業
2016年1月29日
北九州の博物館/ユニバーサル化で知的障害について研鑽
北九州市立自然史・歴史博物館(いのちのたび博物館)は障害者、高齢者、外国人等にもなじみやすい博物館づくり(ユニバーサル化)を進めているが、その一環として1月22日、知的障害児者への知見を深めるための研修を職員や関係者向けに行った。福岡県立大学の寺島正博講師が「知的障害児者の現状」と「障害者差別解消法」をテーマに講演した。
同博物館のユニバーサル化は、文化庁の補助事業として26、27年度の2年間をかけて行っているもので、博物館の展示プログラムの見直しと関係職員の意識の向上とを目指している。2年目の今年度は知的障害児者に関わる展示プログラムをソフト、ハードの両面にわたって見直していくほか、職員の人材育成として全障害種別の特性や対応の在り方等を研鑽することにしている。
この日の研修は、展示プログラムの改善に備え、知的障害児者に関する概論とこの4月から施行される障害者差別解消法について研修を行ったもので、寺島講師は概論については、知的障害児者の①歴史、②法的な位置づけ、③発生時期と行動傾向、➃特徴、⑤行動、⑥彼らへの対応方法、⑦彼らの要望などについて紹介した。この中で同講師は、➃特徴として、「考えたり、理解したり、読んだり、書いたり、計算したり、話したり」する知的な機能に発達の遅れが生じる。金銭管理、会話、買い物、家事などの社会生活への適応に困難が生じる。感情のコントロールがむつかしい、といったことを挙げるとともに、⑥彼らへの対応では、ゆっくり、丁寧に、わかりやすく話すことが必要。文書は漢字を少なくしてルビーを振る。写真、絵、ピクトグラム(絵文字等)などわかりやすい情報提供を工夫する、といった13項目を紹介し、理解を求めた。
一方、この4月から施行される差別解消法については、目的は「共生社会」の実現にあること、差別禁止の対象は行政機関と民間事業者が、また「受ける側」では障害者手帳保持者のほか、社会的障壁で相当な制限を受けている人も含まれていることなどを強調した上で、①制定の背景、②法の対象者、③法のベクトル、➃障害を理由とする差別の禁止、⑤不当な差別的取り扱い、⑥合理的配慮など10項目を紹介した。その中で同講師は、差別禁止には「不当な差別的取り扱い」と「合理的配慮の不提供」があり、行政機関等はいずれもが対象になっているが、商業等を営む民間事業者(営利・非営利、個人・法人をを問わず)の場合、合理的配慮は努力義務になっていると説明した。
また、合理的配慮については「障害のある人たち等から何らかの配慮を求める意思表明があり、その実施が負担になり過ぎない範囲で、社会的障壁を取り除くために必要で合理的な配慮」とし、「意思の表明」、「環境整備」、「過重な負担」がキーワードとなることを指摘した。併せて手話、要約筆記、筆談、図解など本人が希望する方法でのわかりやすい説明が求められることなど合理的配慮の具体例を挙げるとともに、障害児については早い段階からの家族支援が不可欠なことを指摘した。
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